第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
「…どういうこと……?」
雅紀はふっと目を逸らした。
そのまま俺から離れると、入り口のカーテンの前に立った。
「俺達にできることはないけど…でも…」
ぐっと口を引き結ぶと、俺を振り返った。
「翔ちゃんを手に入れたかったら…奪え」
「え…?」
「強引にでも、手に入れろ」
「何を…」
「いいか。そうしないと、失うからな」
「雅紀…?」
さらりと髪をかきあげると、そのまま背中を向けた。
「心が欲しかったら…身体を奪っちまえ…」
「え?」
「じゃあな」
カーテンを開けると、ガラス戸を開けて雅紀は出ていった。
「なに…言ってんの…」
しばらく動けなかった。
なんであんなこと言い出したのか…
ぐるぐる考えていたら、ガラス戸が開く音がした。
カーテンを見つめていたら、智が店内に入ってきた。
「和也…」
智の表情が暗い。
「智……?」
「和也…」
入り口に立ち尽くす智に駆け寄った。
「智…」
「和也…潤が…」
「うん…」
智の身体が震えてる。
「奪えって…」
「え…?」
「翔くんを…奪えって…」
真っ青な顔の智の目には、怯えが浮かんでる。
「じゃないと…永遠に翔ちゃんは…あのままだって…」