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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -


ガラス戸にクローズの札を下げて、閉店の準備に取り掛かった。

「あのさ…ニノ…」
「うん?」

入り口のカーテンを閉めて振り返ったら、雅紀はカウンターに肘を付きながら、壁を見つめてた。

「どしたの?」
「ん…あのさ、翔ちゃん…なんだけど…」

無表情でそこまで言うと、言葉を切った。
ゆっくりと俺の顔を見ると、雅紀は立ち上がった。

「ど、どうしたの…?」

ひとつ、息を吐き出すと俺の方に歩いてきた。

「会った?正月」
「え…うん…智の家に遊びに来てくれた…」
「そっか…」

いつも陽気な笑顔を浮かべてる雅紀の、真剣な表情。
あんまりないことだったから、言葉が出てこなかった。

「…欲しい…?」
「……え……?」

肩に手を掛けられたと思ったら、痛いくらい力を入れられた。

「翔ちゃんが、欲しいかって聞いてんだよ」
「雅紀…?」

怖いくらい、真っ直ぐに目を見つめられた。

「お前、翔ちゃんのことも好きなんだろ?」
「えっ…」
「智も…そうなんだろ?」
「な、何言って…」
「誤魔化すなよ」

逃げようとした俺の腕を、雅紀は握って離さない。

「このままだと…お前たち、永遠に翔ちゃんを失うことになるよ…?」

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