第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
俺も智も、ここまで考えが至っていても、翔ちゃんに直接触れることなんてできない。
ここまでこじれると、翔ちゃんは…
絶対、拒絶する
今日みたいに…
逃げていってしまう
それを俺も智もよくわかってる。
だから、どうしていいのか…
翔ちゃんが俺たちに会いに来てくれたのに、ますますわからなくなってしまったんだ。
「よ!久しぶり!」
正月が明けて、しばらくして雅紀と潤が真っ黒になって店に訪ねてきた。
「な…あんたたち、焼すぎ…」
「しょうがねえだろ。ゴルフ三昧だったんだから…」
「そーそ!それに天気が良くてさ。すごい快晴だったよ」
「へえ…良かったね…」
「あ、俺、智にみやげ渡してくるわ」
「え?もうすぐくるけど…」
「いいから…早く渡したいんだ」
潤は、そう言って俺の店を出ていった。
雅紀はそんな潤の後ろ姿を見送ってから、俺のそばのパイプ椅子に腰を下ろした。
「なんなの?せっかちだね。潤ったら」
「うん…」
今日は珍しく子どもたちは早く帰っていって。
店内には俺と雅紀だけだった。
夕方の6時を知らせる音楽があたりに流れているのが聞こえてきた。
「あ、もう今日は早じまいしちゃおうかな…」