第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「お怪我の具合はどうですか…ナイルの娘よ…」
そう言うと、マサスが抱えてきた袋に手を突っ込んでなにか探してる。
「あったあった…」
差し出してきたのは、小さい壺のような物だった。
「これは…?」
「唇の傷に塗ってください。薬草を煮詰めたものです」
「ああ、ありがとう…」
受け取って中を見たら、どどめ色のスゴイ匂いのする塗り薬が入っていた。
「なんか…効きそうだね…」
そう言うと、マサスは嬉しそうに笑った。
「これ、うちに伝わる塗り薬なんです!」
「マサスのこの薬はよく効きますよ。どうぞ使ってみてください」
小指にちょっと取って、唇に塗ってみた。
もう傷はふさがっていたから、なんかスーッとするだけだったけど。
でもなんか早く治りそうな気がした。
「ありがとう。マツーオカ将軍、マサス…」
そう言うと、ふたりは嬉しそうに笑い返してくれた。
「…なにかお困りのことはありませんか?足りないものとか…」
そう言ってくれるんだけど。
多分こっからは出してくれないだろうなあ…
ジュンフィスに直接お願いするしかないんだろうけど。
「あ…あの、ジュンフィス…王はどうしていますか?」