第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
「智…」
「ん…?」
ベッドの中、智はよく眠れないみたくて。
何度も寝返りを打ってた。
「眠れないの?」
「ああ…ごめん…」
「ううん…」
俺も、眠れなかった。
窶れた翔ちゃんの笑顔が…ずっと、まぶたに焼き付いてて…
こっちに背中を向けたまま、智はなにか考え込んでる。
そっと後ろから抱きしめると、智はこちらに体を向けた。
「あのな…」
「ん…?」
「思ったんだけど…翔くんさ…」
「うん…」
「もしかして…」
暗闇の中、じっと智は俺の目を見つめてくる。
「…うん…」
言わなくても、わかった。
「もしかして、俺たちのこと…待ってるのかもしれない…」
いくら考えても、翔ちゃんが俺たちのこと避ける原因がわからない。
今日、こうやってここに来てくれたってことは、少なくとも軽蔑をしてるとかそういうことじゃないのはわかった。
生活も仕事も順調で…
なのにあんなに窶れるほど、なにかを抱えてる。
俺たちは…臆病で…
でも翔ちゃんは、もっと臆病で…
小さい頃からそうだったからわかるんだ。
もしも拒絶されたらどうしようって、頑なになってしまうんだ。
「どうしたら…いいんだろうね…」