第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
くすくすと誂うように笑う。
「なっ…なにふゅんのっ!?」
頬が腫れて、うまく喋れなくなった。
「ぶーーーーっ…なんだ…おまえ、可愛いな!」
ますますサクミル王子は俺に近づいてくる。
まって、ホント丸出し、やめて。
「ち…ちかよらないでっ…」
「いいから…その傷、治療してやるから…」
「やーらあっ…」
思わず大きな声を出してしまった。
頬にピリッとした痛みが走って、口の中に鉄の味が広がる。
あ、これ結構切れてる…
「~~~っ…」
痛む頬を抑えて、うずくまろうとした。
痛みが凄すぎて立っていられなかった。
その肩を掴んで、サクミル王子はゆっくりと俺を抱き上げた。
「気に入った…なあ、シャトシとやら…俺の国に来ぬか?」
「へ…?」
「こんな陰険な小姑を絵に描いたような義姉の居るエジプトよりも、俺の国のほうがのびのびと過ごせるぞ!」
ちらりとジュンフィスの方を見た。
「ジュンフィスも、どうやら俺に飽きたらしいしな…そろそろ妹を連れて帰ろうかと思っていたところだ」
「えっ…でも、えんだんは…?」
「そんなもの……あんな危険な女の居るところに、妹を置いていけるわけがないだろう…」