第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「なっ…何を言うんだ、サクミル!姉上のことを悪く言うと…」
「あのなあ!」
バンっとサクミル王子が、傍らのテーブルに叩きつけるように手をついた。
「…今まで、おまえが姉上ラブだったから、言わなかったけどよお…相当な女だぞ?あれ」
「はあ…?」
「妹にも…俺にも、すげえ嫌がらせしてきてんだよ」
「なんだと…?」
「おまえと俺が寝室に居るときは、妹に。妹がおまえと面会しているときは、俺…まあよく飽きないもんだよ…」
「嘘を言うな!姉上がそんなことするはず…」
ジュンフィスが食ってかかろうとしたら、サクミル王子は俺を指差した。
俺の腫れ上がった頬を見たジュンフィスは、動きが止まった。
「シャトシ…」
「ま、信じるも信じないもおまえ次第だがな。俺は嘘は言ってないからな」
「サクミル…」
「実際、今だっていいところ邪魔されてんだろ…?いい加減気づけよな…」
「あ……」
ジュンフィスは黙り込んだ。
サクミル王子は俺の腕を取ると、立ち上がらせた。
「どれ…酷くやられたな。唇が切れてる…」
そう言って、唇の端をべろりと舐めた。
「んがっ…!?」
「なんだ…いい反応するじゃないか…」