第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「こんなヘンペーパイパイ女でいいなら、俺でもいいではないか!」
あれ…?この声…
「だぁから~…おまえ、早く国に帰れよ…」
「なんでそんな冷たいこと言うんだよっ!大体、先に誘ったのはお前のほうだろう!?」
「だって、ケツの具合が妹より良さそうだったんだもん…」
「もん、じゃねえよっ!責任取れや!このフシダラ王め!」
バサッと、天井から下がってる布を払って、男がベッドに乗り上げてきた。
「さっ…櫻井教授っ…!?」
「ああん!?なんだって?」
その男…櫻井教授にそっくりの顔をしている。
しかし、髪は長くて胸の下まで伸ばしてる。
もう、この時点で他人だとわかった。
櫻井教授、もっと髪が短いもん…
長い髪の上から、赤を基調としたカラフルな布を被って、後ろに垂らしてる。
頭の上から、輪っかを嵌めて留めてるみたいだ。
その布には、精巧な刺繍が施されている。
白いワンピースみたいなくるぶしまである服を着て、腰に薄い赤色のベルトを巻いている。
着ている服は、エジプトの古王国時代のものではなかった。
これは確か…
「トルコ…?」
「え?」
「いや、トルコじゃない…ヒッタイト…?いや違うな…もっと時代が古い…」
ヒッタイトとは…エジプトの新王国時代に栄えた国だ。
今俺がいるのは、多分古王国時代だから、まだヒッタイトはできていないはず。
現代で言うトルコの辺りの古王国だ。
その頃のトルコ近辺って、確か王国はないはずだけど…
「私の顔を知らぬのか…王宮に上がるくせに、何も知らぬのだな…」
バサリと頭の布を外すと、見下ろすように俺を見た。
その仕草は、どことなく優雅で気品があった。