第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「なんだ…もう準備万端なのだな…?」
嬉しそうなジュンフィスの声が聞こえる。
ちがう…眠いだけなんだよ…
だめだ、声を出すのも億劫…
そっと俺の体をベッドに寝かせると、ジュンフィスが覆いかぶさってくる気配がした。
「シャトシ…」
だからぁ…シャトシじゃないってば…
「…なぜだ…初めて会った気がせぬ…」
俺もそうだ…なにせ松本と顔がそっくりなんだから。
「シャトシ…」
だんだん、ジュンフィスの体温が近づいてくる。
キス…されるのかな…
なんか…
別に、いっか…
だって、ジュンフィス…なんか可愛いんだもん…
「うをっ…」
突然、俺の上に覆いかぶさっていた気配がなくなった。
「誰だっ…!うっ…!?」
ジュンフィスのただならぬ声が聞こえて、思わず目を開けた。
「じゅ…ジュンフィス…?」
ベッドの上にはジュンフィスは居なかった。
寝ぼけた頭を必死に巡らせて、部屋の中を見回してみたら、背後に黒い影がふたつみえた。
ひとつは、ジュンフィス…
もうひとつは…
「…酷いではないか…」
男の声だ。
一体誰…?
「酷いではないかっ…ジュンフィス!」
絶叫すると、その男は俺の方を見た。