第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「さあ!食え!」
あのあと…
ジュンフィスは俺を抱き上げたまま、爆笑するだけ爆笑した。
どうやら、笑い上戸らしい。
これも松本そっくり。
それから俺をベッドに寝かせると、さっきの女官たちを呼び出して、いろいろと指図していた。
しばらくすると、あれよあれよと寝室に食べ物が運ばれてきたってわけ…
「どうした!食わぬのか!?」
ぐいぐいと俺に迫ってくると、果物を掴んで俺の口に押し付けてきた。
「ま、まっふぇ…たべりゅから…」
もう…せっかち!
なんの果物だかよくわからない。
でも、もうお腹が限界だったから、ちょっと口を開けて、ジュンフィスが押し付けてきた果実を齧ってみた。
「…おいし…」
ぽつりと呟くと、ジュンフィスはとっても嬉しそうな顔をした。
年は、俺と変わらないくらいに見えるけど…
古代の人だからか、どこか少年っぽい風情を残してて。
…なんだか子供みたいで可愛い…
「って、何を思ってるんだ!?」
「は?」
「あ、いや…なんでもない…」
可愛いなんて…男相手に…
こんな眉毛太くて、俺よりもがっしりした男相手に何考えてんだ。
「いいから、食え!」
また唇に果実が押し付けられた。
ほんのり甘くて…そして、少しだけ懐かしい味がした。