第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「遅いっ…!」
その部屋に入ると、ジュンフィス…この時代の王(ファラオ)が、ご立腹だった。
仁王立ちで、俺のこと睨んでる。
さっきは豪華な飾りのついた首飾りやマントなんかつけてたが、今は腰にぐるりと麻の白い布を巻いているだけだ。
本当に松本にそっくりで…
あいつ、中東顔だとは思っていたが。
マサスの相葉といい、ダーオカといい…
「一体何なんだ…」
「ああ!?なんか言ったか!?」
しかもキレやすい。
ほんと、そっくり…
「あのお…」
「何だ!早くここに来い!」
頭がクラっとした。
思わず入り口の壁に手をついた。
その薄暗い部屋は、至るところに明かりが置いてある。
なんの油かはわからないが、小皿に入った油に芯が浸してあり、その先端に火が灯っている。
ぐるりと石造りの広い部屋の中央には、ふかふかのベッドのような寝台が置いてある。
天井から、薄い布が垂れ下がってて、多分あれを閉めてしまったら、蚊帳みたいになるんだろう。
その横には、机やらベンチみたいな椅子とか置いてある。
そのどれもに豪華な装飾が施されてて、アクセントに黄金がはめ込まれ輝いている。
こんな豪華な調度品が作れるなんて、国の勢いが相当強いはずだ。
古王国時代は、第4王朝のクフ王からメンカウラー王の時期が、一番王家の力があった。
もしかしてこの王は…
第4王朝の未発見の王なのか…?