第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
瞬間、新鮮な空気が鼻と口から、水混じりで入ってきた。
「ごほっ…ごほっ…」
水が気管に入って、盛大に噎せた。
その背中を、そっと大きな手が擦っている。
「全く…なにを遊んでいるのだ」
笑い混じりで、どうやら俺に言われてる。
そっと顔を上げて後ろを見たら…
「……!」
「なんだ…?」
「まっ…松本っ!!」
あの濃い顔が、俺の後ろに座り込んでいたのだ。
「マツモト…?」
その太い眉を怪訝に歪ませ、俺の顔をまじまじと見る。
「それは、お前の恋人のことか?」
にたりと不敵な笑いを浮かべると、俺の腕を強引に取って立ち上がった。
「えっ…ちょっ…痛いっ…」
無理やり立ち上がらせると、松本は俺の顔を見て満足げに笑った。
「いい、ヘンペーパイパイだ」
「は、はあ?」
俺の胸を見てる…
って、へんぺーって扁平ってこと?
パイパイって…胸のこと?
「しっ…失礼なっ…」
「胸がないのは、敏感な証拠。気に入った。この女を今日の夜伽に」
「あの…王よ…その方は…」
逃げていった女のひとりが戻ってきた。
王…?
って…えっ…こいつがファラオ!?
「なんだ!」
横暴に言うと、俺を女に向かって投げ捨てた。
「早く清めて持ってこい!」