第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
深夜まで、喋り続けた。
本当によく喋って…
小さい頃の話から、今の仕事の話まで。
たくさんたくさん喋った。
まるで会えなかった一年を埋めるみたいに。
「…そろそろ、帰ろうかな…」
0時を過ぎた頃、翔ちゃんは立ち上がった。
「え…もう…?」
帰したくない。
「泊まっていけば…?」
そう言ってみたけど、翔ちゃんは微笑んで首を横に振った。
「ここ、智くんの家だろ?」
「あ…」
「なんでニノが泊まってけっていうんだよ」
「と、泊まっていきなよ!翔くん」
「智くん…」
「もっと、話したいこと…あるし…」
ぎゅっと智が翔ちゃんの腕を握った。
こんなこと、智がするなんて珍しくて。
翔ちゃんはびっくりした顔をしてたけど、そっとその腕を離した。
「嬉しいけど…帰るね…」
「翔くん…」
「俺の寝る布団、ないでしょ?」
「あ…」
そうだった。
ここには智のベッドしかなくて。
いつも俺たちは同じベッドに寝てるから、そんなこと思いつきもしなかった。
「セミダブルじゃ…3人で寝られないでしょ…」
少し寂しそうな顔をして、翔ちゃんが呟いた。
「じゃあ、次までに布団用意する」
智は頑固な声を出して俯いてしまった。