第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
ほんとうに痩せて…
なのに、微笑みを浮かべてとても翔ちゃんは幸せそうにしてる。
「翔くん、ちゃんと食べてる…?」
キッチンでテーブルに翔ちゃんをつかせると、智は翔ちゃんの肩に手を置いた。
「ジム行ってるんだよ…」
「…俺たちに連絡もできないのに?」
「ふ…まあ、そういうときもあるよ…」
はっきりとは答えない。
でも、ここ一年、電話でしか話せてなかったけど、今の翔ちゃんは昔と変わらない…優しい翔ちゃんのままだった。
「ふたりは…元気そうだね…」
懐かしいものを見るみたいに、翔ちゃんは俺たちを眺めた。
「相変わらず、ふたりで居るんだ」
「うん…今年はお金もないし、ふたりとも暇でさ。智の部屋に遊びに来てたんだ」
「なんたって徒歩0分だもんな」
「そうそう…」
「潤と雅紀は海外だってな。豪勢だよな…」
「なんか取引先の人たちと一緒だって言ってたから、仕事みたいなもんだってぼやいてたよ」
「ぷっ…大変だな、社長さんたちは」
「うん…」
酒の準備をしながら、翔ちゃんはよく喋った。
まるでここ一年のことがなかったかのように…
昔に戻ったみたいに、よく笑って…
なんにも聞けないまま、翔ちゃんは微笑んでる。