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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~


バタバタと船の上が一気に騒がしくなった。

甲板にひれ伏して震えているもの、俺にひれ伏して震えているもの。
みんな手のひらをこちらに向けて、口々に何かをブツブツ唱えてる。

「申し訳もございません!ナイルの川の神よっ…」

兵士の一人が、俺の体を縛っている縄を解いた。

「ち、違うよ!あれはただの月食!」
「は…?」
「凶事の前触れなんかじゃないから!ただ、月に地球の影が写ってるだけだから!」
「な…なにを仰っているんだ…神は…」

兵士は俺から手を離すと、ダーオカの顔を見た。

「は、早く俺の縄も…」
「あ、ああ…」

呆然としているマサスを尻目に、俺たちは自由の身になった。

「ありがとうございました!ナイルの川の神よ!」
「ちょっともう…だから誤解なのに…」

でも、縄が食い込んで痛かったから助かった…

「美しい…神よ…」

ダーオカが俺に向かってひれ伏した。

「だーっ!やめてよっ!俺は神なんかじゃないっ!」
「じゃあ、ナイルの神の産んだ娘だ!」
「ええっ…なんでそうなるの!?」
「ナイルの娘よ…我々をどうかお守りください…!」

どうやら、月食がよっぽど恐ろしいものみたく、俺のことを伏し拝んでやめない。

「だからああ…ただの月食なんだってばー!」

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