第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「その男も女も捕らえておけ」
そう言うと、豪華なマントを翻して去っていった。
マサスは顔を撫でながら、俺とダーオカを縄で縛った。
「バカっぽいって…バカっぽいって…気にしてるのに…」
喋り方まで相葉なのに…
「うう…」
俺、一体なんでこんなとこにいるんだろう…
「おい…?泣いてるのか…?」
なんだか心配顔でマサスが俺の顔を覗き込む。
涙で顔がぐんにゃりと歪んで見える。
「い…今のファラオの名前はっ!?」
怒鳴るように言うと、マサスは後ろにドテっと尻もちをついた。
「な、なんだと!?」
「いつの王朝なんだよ!?今はっ…」
もうやけくそだった。
「か…神よ…どうなさった…」
ダーオカが縛られたまま、俺ににじり寄ってくる。
「こやつ…!やはり外国のスパイかっ…!」
尻もちをついていたマサスが立ち上がった。
「おおっ…見ろっ…」
マサスの後ろにいた兵士たちが、空を見上げてざわめいている。
「おいっ…」
マサスが怒鳴っているが、みんな空を見上げたまま騒ぎ出した。
「つ…月が、欠けているぞ!」
「これはっ…神が怒っておられる!」
「神を捕まえたからだっ…早く縄を解けっ…」