第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「うおおおおおおおおおお!!」
寝ていたのだろうか、びっくりしたワニは俺に向かって大きな口を開けて威嚇してくる。
フシャーフシャーって呼吸音が聞こえてくる。
「うわぁぁぁご、ごめんなさぁぁあいっ…」
慌てて飛び下がったところにも、ワニ。
どうやらここは、ワニのねぐらだったらしい。
ゴツっとした感触を足の裏で感じたと思ったら、俺の体は宙に浮いていた。
「うそぉぉぉぉ~~~~~!!!」
ナイルの水面に向かって、思いっきり体を吹っ飛ばされた。
「こんなんばっかやーーーーーーんっ…!」
目を閉じたら、全身に強い衝撃を感じた。
それから水面がすごい音を立てて、俺の体はナイルの水の中に引きずり込まれた。
「ごぼおおおおお…」
息がっ…息ができないっ…
思い切り口を開けていたから、水が口の中に入ってくる!
手で水をかくけど、どっちが上か下かわからない。
っていうか動けない…のは…
俺の服が何かに絡まっている!!
ぐいっとスカートの部分の布を引っ張ったら、ワニの目がギラリと水中で光った。
「ごぼぼぼぼぼぼぼ…!!」
ワニにスカート噛まれてる!!
「ごぶごぼおおおっ…」
びっくりして水飲み込んだっ…
一生懸命、布を引っ張ってみてるけど、びくともしない。
このままじゃ、俺、ワニに食われるっ…!
「ごぼおおおおおっ!!ごぼおおおおっ!!」
慌てて全身でもがいた瞬間、ガツッと頭に何かが当たった。
目の前が真っ暗になって…
ああ…俺、こんなわけのわからないとこで…
死ぬのかあ…
なんて思いながら、気を失った。