第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「一体なんだって…こんな漫画みたいな展開になってんだよおおお…」
頭を抱えて、ナイルに向かって石を投げる。
ぽちゃんと音が聞こえるが、あとは何の物音もしない。
本当に静かだ。
全世界が寝静まってるんじゃなかと思うほどで。
ナイルの川面に映る月を見ながら、ぼんやりと考えた。
「俺、戻れるのかな…」
つか、ドッキリじゃないのかな…
それとも、トゥルーマン・ショー?
スゴイ手の込んだいたずらならいいのに…
「どっきりでした~」とか言って、三宅さんとか、相葉とか松本が物陰からでてきてくんないかな…
いつもはいらっとするけど、今なら笑顔で許せる。
向こう岸が見渡せないほどの、広大な流れのナイルを眺めながら、なんだか涙が滲んできた。
誰がいるわけでもないのに、無駄に堪えてみたけど、だめだった。
ボトボトと、地面に涙が落ちる。
こんな泣き方をするのは、小学生のとき、何を思ったか缶の蓋を強く握って指を切った以来だ。
「う…ううう…」
涙で、ナイルに映る月も歪んで見えた。
その時、遠くから犬の遠吠えが聞こえた。
さあっと、血の気が引いた。
「やばい…野犬いるかも…」
そうだ。
俺、何してんだ。
野生の動物が出てきたら…
って、ナイルってワニいるじゃん!!