第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
そりゃ中東の人に比べたら、平たいけど…
その男の顔をじっと見た。
どこか、見覚えのある目をしている。
「…ダーオカ…?」
「えっ…なんで俺の名前がわかるんだ?」
「やっぱりダーオカなの!?俺のこと、覚えてないの?」
そう、さっきテントで初めて会ったけど…
秒で俺のこと忘れるわけないだろ!?
「お…覚えてない…」
人の良さそうなダーオカは、必死でウンウン唸って思い出そうとしている。
さっきはあんなに無愛想だったのに、一体どういうことなんだ…?
その間に、おばあさんはニコニコと俺に布切れを差し出してきた。
どうやら顔も泥まみれのようで、濡らしてある布で拭けと言っているようだ。
伸ばしっぱなしの髪の毛が邪魔くさい。
長い髪の毛を、腕につけたままの髪ゴムで縛った。
せっせとおばあさんが布切れを洗ってくれるから、顔も全身もきれいに泥を落とすことができた。
「…美しい…」
「はい…?」
「なぜそんなに、平たい顔なのに美しいのだ…?」
「…な、何を言ってるの…?」
ダーオカは俺の顔をじっと見ている。
なんだか怖くなって後ずさった。
そういえば、さっきも握手した手、離してくれなかったもんな…