第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
そんななか、隅のほうでガサガサしてたおばあさんが、何かを俺に差し出してきた。
おばあさんが着てるのと同じような、麻のワンピースだった。
どうやら泥だらけだから、着替えろと言っているようだ。
言葉は発しないけど、俺に向かって服をぐいぐいと差し出してくるから、しょうがなく着替えた。
「…これって、女物だよな…?」
まあでも、なにもないよりマシだと思って、靴を脱ぎ捨てて下着も全部脱ぎ捨てた。
「あ…」
ポケットにスマホが入ってた。
慌てて取り出して電源を入れようとしたけど、入らなかった。
「あああ~…水没したからか…」
がっくりうなだれて、力も出ない。
「ただいま」
バサッと入り口の布をまくって、誰かが入ってきた。
「…誰だっ!」
その人は男で、俺をみると身構えた。
腰に、麻でできた布を巻きつけただけの姿だった。
背格好は俺と同じくらいだけど、筋骨隆々だ。
「えっ…その…決して怪しいものじゃっ…」
「お前、逃亡奴隷だなっ!?どこから逃げてきたんだっ」
「えっ…ど、奴隷?!いつの時代の話!?」
そう言うと、怪訝な顔をして俺を見た。
あれ?なんで言葉通じてるんだ…?
「その平たい顔。外国人だろう?」
平たい顔って…