第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
日差しが痛い。
半袖の腕に突き刺さる。
首の後ろも焼け焦げてるみたいに痛い。
「喉乾いた…」
日干しレンガの家は、人がいる気配もない。
動物もなにもかも、死に絶えたような静けさで。
町並みのでこぼこした土の道を歩いていると、突然一軒の入り口の布がバサリと開いた。
中にいたのはおばあさんで、目を丸くして俺のこと見てる。
麻でできた白いワンピースみたいなのを着て、白髪の長い髪は後ろで束ねている。
「み…水を…」
そう言うと、おばあさんは奥にひっこんでから、素焼きの椀に満たした水を持ってきてくれた。
家の入口で、地面に跪きながらその水を飲み干した。
…生水かな…あとでお腹痛くなりそう…
そう思えたのは、ちょっと人に会えて余裕が出たからなのか。
二杯目の水をもらう頃、遠くから鐘の鳴るような音が聞こえてきた。
キョロキョロしてると、おばあさんが俺のことを家の中に引っ張り込んだ。
「え…?え…?」
何も言わず、おばあさんは一間だけの家の奥を指差した。
そこには布切れが敷いてあって、そこに座れということらしい。
さまよい歩いていたから服はすっかりと乾いていた。
遠慮なく座ると、家の外が賑やかになってきた。
ガヤガヤと男の声が聞こえてくる。
動物の鳴き声のようなものも聞こえる。
牛とか馬とか…ラクダとかかな…?