第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「うーん…?」
なんか…ドロっとしてる…
なんだ…?
目を開けると、目の前には草。
「草…?」
葦に似た植物が目の前に生い茂っている。
どうやら、水辺のようだ。
ドロッとしているのは、俺の寝ている下が水を含んだ泥だからだ。
「ほえ…?」
体を起こしてみると、俺は半分水っぽい泥に浸かりながら、葦みたいな草の中に倒れていた。
「なんで…」
とつぶやいたところで思い出した。
襲われたんだ!
慌てて立ち上がってみたけど、背の高い草の間からは何も見えない。
ほんのちょっと先には水が溜まっているのが見えたから、逆方向に歩いてみた。
草をかき分けながら進むと、どうやら俺はナイル川に落ちていたらしい。
確かにナイル川沿いを走ってはいたけども…どうして落ちたんだろう?
葦みたいな背の高い草原から抜け出すと、町並みが見えた。
「ああ…もう、どうしよう…」
服はドロドロで、靴の中にも水っぽい泥が入ってる。
こんな格好で、外国人が助けを求めて、助けてくれるものだろうか…
トボトボと歩いて道に出たけど、灼熱の中、シンとしている。
「あれ…?」
おかしい。
ここはどこだ。
遠くに見えるはずの、ホテルとか高層のビルが全く見えない。