第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
慌てて後ろを振り返ると、リアウィンドウから見える道路にはこちらに向かって猛スピードで走るパジェロみたいな車が見えた。
フロントガラスから、白いターバンで顔を覆った男が二人見えた。
「ええっ…なんだあれ!?」
「うわあっ…」
みるみる追い上げてきた車は、俺達の乗る車に追突してきた。
「うっそおおお!ぶつかってきたぁぁぁ!」
「ツマカレ!ニゲル!」
ニノールが叫んでいるけど、もう既にアシストグリップに掴まっていないと、天井に頭がぶつかりそうなほど車は揺れている。
「俺たち金持ってないよおお!!」
相葉が泣きそうになりながら叫んでる。
またひどい衝撃が来て、後ろの車が今度は横につけてきた。
「フセロっ!アタマ、フセロっ!」
ニノールの叫びで、身を伏せようとした瞬間、今度は車が側面に体当りしてきて、俺の乗ってた座席側の後部ドアが吹っ飛んでいった。
「おーちゃんっ…」
その衝撃で、俺は外に投げ出された。
「うわあっ…」
大きく吹っ飛びながら、スローモーションのように風景が見えた。
砂煙を上げて遠ざかっていく二台の車。
俺の乗っていた車の後部ドアがあったところから、相葉が顔を出してこちらを見ている。
乾いた青空が、俺の目の前に広がった。
それが、最後だった。