第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
ニノールは無言で、ハンドルを切った。
「えっ?どこいくの?」
その橋を通らないとカイロには入れないというのに、ニノールは来た道を逆走し始めた。
「チカミチ、アル」
「へええ…さすが現地の人だなあ。そんな道あるんだ?」
「……」
ニノールが黙っているものだから、相葉が一人で喋っている格好になって、ちょっと気の毒だった。
「やっぱ、ニノールに来てもらって良かったね!おーちゃん!」
でも、相葉は気にしてないようだった。
やっぱ、天然強い。
「あ、朝飯食べた?俺、おにぎり持ってきたよ」
「えっ…どうやって…」
「米、持ってきてるから、部屋でご飯炊いたの」
…世界が滅びても生きてそう…
「俺、食べるー!」
助手席から、無邪気に松本が手を伸ばしてきた。
「えー?おまえがあ?」
「いいじゃん!俺にもくれよ!相葉先生!」
「えー…?」
「久しぶりに食べたい!日本の米!」
「えー…?」
なんてやってるのを見てたら、いきなり車が猛スピードで走り出した。
「うわっ…びっくりしたあ…どしたの?ニノール」
松本がずっこけてしまって、慌てて座り直した。
「…ダレカ、オイカケテクル…」
「ええええっ!?」