第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
昨日の時点で、ホテルに電話を掛けて確かめようとしてたんだが、ニノールに止められていたんだよね。
ホテルの従業員も、一枚噛んでる可能性があるからって。
「ヘヤ、イナイ。トモダチ、カクニンシタ」
「ニノールの友達が行ってくれたの?」
俺も思わず身を乗り出して後部座席から聞くと、嬉しそうに頷いた。
あれから、ニノールは独自に調査してくれたらしい。
友達って…やっぱり元軍人なのかな?
「ホテルに居ないとなると…どっかにやっぱ監禁されてるのかな…」
相葉が不安そうに俺の顔を見た。
見られても、困る。
俺だってどうしていいんだか、わからないんだから。
「ニノール凄えな!仕事早い!さすが、元軍人。カッコいいな!」
松本がにっこり笑いかけると、煩そうに窓の外を見た。
そこには、雄大なるナイル川の姿がある。
「シゴト、キチントスル…トウゼン」
「お、おう…そうだよな…」
どこが地雷だったのかよくわからないが、とにかくニノールはそこから黙り込んでしまった。
車はナイル川を横断する大きな橋の手前で止まった。
「渋滞が酷いな…」
橋の近くでは渋滞は日常茶飯事で。
今日も例に漏れず、盛大に渋滞が起こっていた。