第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
調査隊の借りてる車を一台、俺たち用に確保して、乗り込んだ。
「シュッパツスル」
「おう」
運転席に乗ったニノールがいうと、助手席の松本が頷いた。
チッと何故か舌打ちして、オンボロジープはガタゴトと悪路を走り出した。
現在、カイロは治安が悪い。
だが、一時期よりはだいぶマシになった。
やっとISによる脅威が落ち着いてきたところだ。
だが、イスラエルに近いシナイ半島なんて、渡航中止勧告だ。
シナイのISILがテロを頻発させているから…
しかし、ナイル川流域に関しては、注意レベルも1。
大手旅行会社もツアーを打ち出すくらいには安全になった。
だから俺たち調査隊も、渡航することができたんだけどさ。
「で、ニノールはなんか情報掴めたの?」
相葉が後部座席から身を乗り出して聞くと、ニノールは少し頷いた。
「サクライきょーじゅ、ほてるイナイ」
教授は、カイロの考古学研究所に書類を提出するついでに、いくつか回らなければならないということで、何泊かする予定でカイロ市内に一人でホテルを取ってたんだよね。
日本と違って何事にも鷹揚だから、いつ用事が終わるかなんてわからないし、治安も悪いから観光地のホテルを拠点に歩き回ったほうが安全なんだよね。
櫻井教授はそのホテルには帰っていないらしい。