第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
バサッとテントの入り口の幕が開いて、松本が入ってきた。
「来ましたよ。ニノールの代わりの人」
そう言って、入ってくる後ろには、顔を布で覆った男がふたり入ってきた。
ニノールと…代わりの人だろう。
「おーのサン、オハヨウゴザイマス」
「ああ、おはよう。その人?代わりの人…ごめんね?急に…」
「イイ。かねモラエル、ウレシイ」
そっか…
職にでもあぶれているのかな…?
そう思って、ニノールの後ろに立っている男に目を遣った。
「ダーオカ」
その男は、一言だけいうと、右手を差し出してきた。
「あ、ダーオカさんっていうの?」
ニノールに聞くと、頷く。
「よろしくね。何日かかかると思うけど…」
そう言って右手を握ったら、ぎゅうっと握り返された。
「ダーオカ、かくとうぎスゴイ。アンシン」
「おお…そうなんだ…」
道理でごつい手のひらだ。
これなら安心できる。
「じゃあ、三宅さん…」
そう言って手を離そうとしたけど、ダーオカは離してくれない。
顔を布で覆っているから、目しか見えないんだが、その目がじっと俺を見ている。
「あの…離して…?」
困ってニノールの顔を見たら、無言でチョップしてくれて、なんとか手は離れていった。