第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
日本から持ってきた発電機が、ぶおおんとすごい音を立てて電気を通してくれてるから、パソコンは問題なく動く。
ついでに衛星回線で、インターネットもばっちりだ。
だからメールも問題なく届く。
「お…櫻井教授じゃん…」
メールの受信ボックスには、今、ナイル川の向こう側のカイロに居る櫻井教授からだった。
今回の調査隊の責任者だ。
カイロの考古学研究所に書類を提出に行ってるんだ。
「なになに?教授、いつかえってくんの?」
電池式の小さい扇風機を顔に当てながら、相葉が近づいてきた。
「……」
「…おーちゃん?」
「…意味分かんない…」
「へ?」
「ちょっと、読んで…?」
相葉にパイプ椅子を譲った。
ガシャっと大きな音を立てて、相葉はその椅子に座った。
「えー…なになに…?たいそう大野くんに於いては…?なんだこれ…」
無題
たいそう大野くんに於いては、さぞや熱心に発掘作業に従事していることだろう。
すぐにそちらに戻りたいところだが、私はちょっと今、戻ることができない。
けったいな事態になっており、身動きが取れないのだ。
てきとうな時期にそちらに戻るので、心配しないように。
櫻井
「…ね?意味分かんないよね?」
「とにかく戻れないってことはわかるけど…なんか、日本語がおかしくない?」