第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
調査結果は、驚くものだった。
翔ちゃんの生活は、順調だった。
会社では厚く信頼され、主任になってますます順調で。
家庭でも、家族円満で問題はない。
どこにも、あんなに翔ちゃんを窶れさせる要素はなかった。
「え…どういうこと…?」
由美さんは俺たちを交互に見ると、ボイスレコーダーを取り出した。
「…最後に、これを…」
高級レストランで、撮れたものだという。
「今月の8日…ですね。一緒にいるのは、相葉さんと松本さんです」
「え…?」
「そう。この前お聞きした、同級生…幼馴染ですよね?」
「はい…」
由美さんが、三人でテーブルについている写真を見せてくれた。
確かに、翔ちゃんと潤と雅紀だった。
「音声は残念ながら小さくて…鮮明にする処理は施してありますが、ほとんど聞き取れません」
由美さんがボイスレコーダーを操作して、再生ボタンを押した。
「でも…ここだけ、聞き取れます」
少し雑音が入ってて…
でも、遠くで潤の声が聞こえた。
「あ…潤…」
由美さんは頷くと、ボリュームを上げた。
カチャカチャと食器とフォークが当たる音の合間に、かすかに聞こえた声…
”あの二人はそれを一度乗り越えたんだから…”
”できるはずだ”