第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
12月の半ば、調査結果が出た。
由美さんが俺の店を訪ねてきたのは、また夜の8時を過ぎた頃だった。
店内に招き入れると、奥の事務所に入ってもらった。
「ふう…今日は寒いですね…」
電気ストーブに手をかざしながら、由美さんは鼻の頭を真っ赤にしている。
「コーヒーでも飲みますか?」
「頂いてもいいですか?」
ふふっと笑うと、由美さんは手を擦り合わせた。
心を落ち着けるために、ゆっくりコーヒーを淹れた。
豆を挽いて、丁寧にドリップする。
コーヒーが入ると、由美さんは少しだけ飲んで微笑んだ。
「美味しい…」
「よかった」
智が俺の顔を見上げて微笑んだ。
俺も、微笑み返した。
「…すいません。遅くなっちゃいますね…」
半分ほど飲んだところで、由美さんが話そうとした。
「いいえ…いいんです。全部飲んでください」
「でも…」
「いいんです…」
智の声は、頑なだった。
ぎゅっと握り込んだ手に力が入っているのがわかった。
「智…」
そっと肩に手を置くと、不安げに俺を見上げた。
「大丈夫…」
「うん…」
そんな俺たちの様子を見て、由美さんはカバンから封筒を取り出した。
「では、飲みながらお話させてください」