第6章 夏の終わり
「翔…にい…」
「ん…?」
またうつむいてしまった翔にいの頬に触れた。
怯えた子供みたいに、俺の顔を見上げた。
「まだ…怖い…?」
翔にいは答えず、目を逸らした。
「…俺、傍にいるから…」
翔にいが口をきつく引き結んだ。
何かを堪えるように、遠くを見た。
その目は、赤くて…
でも、とても美しくて…
外の明るい陽の光を、キラキラと反射してた。
少し肉付きの戻った頬は、涙で火照って熱くなってた。
その熱が、心地いい。
「…まだ…大学生のくせに…何いってんだよ…」
「だからあ…もう来年から社会人だってば…」
「お前のこれからを、奪うつもりはない。だから、東京に帰れ…」
そうは言ってるけど、翔にいの言葉には力が入ってなくて…
ちょっと強い風が吹いたら…
その細い体は、倒れてしまうだろうと思う。
だから傍に…
「…市内に…アパートを借りるよ…」
「和也…」
「翔にいも元気になったら、仕事してね?そんで一緒に暮らして、お金貯めよう…」
「だめだ…」
「お金貯めたら…またここに…家を、建てよう」
そっと翔にいの肩を引き寄せた。
ぎゅっと抱きしめると、体から力が抜けて…
俺に身を任せてくれた。
それが…
震えるほど、嬉しい