第6章 夏の終わり
あの人は…
翔にいのおじさんとおばさんが亡くなってから現れるようになった。
ひとりぼっちになってしまった翔にいの傍に、ずっと居てくれたそうだ。
「…なにをそんなに絶望してたんだって…今なら思えるけど…あの時の俺は、本当に絶望しか感じていなくて…」
少しだけ翔にいは俯くと、ぎゅっと拳を握った。
「こん…な、性癖持ってて…こんな田舎で、誰にも理解されないで、一生ひとりで…生きて…行くことに…絶望しか感じなかったんだ…」
女の人とも付き合ったことはある。
でもどうしても、最後の一線は超えられなかった。
自分には無理だったと…翔にいは泣いた。
まだ両親が生きてるうちに、故郷を出ることも考えたことがある。
でも、翔にいは臆病で…それに、自分の性癖も認めることができなかったから、どうしても出ることができなかったと…
そんなときに、翔にいのご両親は事故で亡くなった。
家を出て都会や外国で一人暮らしすることも考えた。
でも、両親が眠るこの地を離れるのも、どうしようもなく怖い。
「…誰かに拒絶されたらって…思うと、怖くて…」
今まで、性癖以外はなんの障害もなく、順調に流れた人生。
ここからはみ出るのも怖かった。
どうして…自分は一人なんだろう
どうして…親は自分のこと連れて行ってくれなかったんだろう
そう思うようになった時、あの人は翔にいの前に現れた。