第6章 夏の終わり
病院から、翔にいの家だった所までは一時間ほどかかった。
家の前の広場だったとこに車を入れると、翔にいはじっと家だった場所を見ていた。
シートベルトを外して、ハンドルに体を凭れさせながら俺もその場所を見つめた。
「…焼け跡は、おじさんたちが手配して片付けたよ」
「うん…」
その場所には、今はもう草が生い繁っていて。
時々、おじさんが来て除草するんだけど、どうにも間に合わないみたいだった。
「…なにも…残ってなかったって…」
「…そっか…」
母屋にあったものは、尽く焼け落ちて。
残ったのは納屋と車庫だけで…
あの火事の後、翔にいは暫く会話をすることもできなくて。
通帳やいろんな諸手続きは、おじさんやうちのかあちゃんが戻ってきて代行した。
だから、なんとか失ったものは最小限にはできたと思うんだけど…
「和也…」
「え?」
「和也はその…知って、た?潤のこと…」
前を見たまま、翔にいは俺を見ないで質問してきた。
「…うん…知ってた…」
「…そっか…見えてたのか…やっぱり…」
この家で過ごした日以来、翔にいとふたりきりでちゃんと話すのは初めてだった。
なんだか、怖い。
でも、ちゃんと話しておかないといけない気がした。
「聞いても…いい…?」
翔にいはゆっくりと俺の方を見た。
「ああ…」
少しだけ諦めたように、息を吐き出した。