第6章 夏の終わり
「何言ってるんだ…おまえ、そんなこと今まで一回も…」
「もう何社か面接行ってるんだよ。結果は芳しくなかったけど」
「何をバカなこと言ってるんだ!」
枕元にあった文庫本を投げつけてきた。
「…まあまあ…翔…落ち着いて…」
大野さんが翔にいの肩に手を置いてなだめようとしてる。
「智くん…和也を連れて帰って…」
「翔…」
「こんなところ、来ちゃだめなんだっ…」
大野さんは困った顔をして、俺を見た。
「ちょっと…出てて貰っても、いい…?」
「え?」
「翔にいとちょっと、話しがしたいから…」
「でも和也くん…」
「興奮させないよう、気をつけるから…」
「…わかった…」
大野さんは病室をそっと出ていった。
暫く、翔にいが黙ってうなだれてるのを眺めてた。
肩が震えてる
「帰れ…帰ってくれ…」
「…翔にいと暮らすためだよ」
翔にいのベッドに近づくと、肩に触れた。
「…駄目だ…東京に、帰れ…」
「翔にいの家も、建て直す。その家でふたりで暮らそう?」
「何言ってるんだ…おまえみたいな若いやつが、何を考えてるんだっ…」
「翔にいのこと」
「え…」
「翔にいのことしか、考えられないんだよ」