第6章 夏の終わり
「久しぶり!背ぇ伸びた?」
「…もう成長期はとっくに終わってるよ…」
「ぶふっ…知ってる」
「自分が成長期来なかったからって…」
「あん?」
駅前のロータリーに停めていたコンパクトカーまで足早に向かう。
「早くしないと、面会時間終わっちゃうから…」
「あ、うん」
流石に東京より涼しかったけど、やっぱり外に出ると暑い。
汗を手の甲で拭いながら、大野さんの後についていった。
「…忙しいのに、ごめんね…」
「なーにいってんだよ!迎えくらい、いつでも言ってよ」
車に乗り込むと、すぐに発進。
「…大野さん、ますます焼けたね…」
「んー。最近、雅紀が煩くてね。運動するようになったよ」
そう言って、ボリボリと頭を掻いた。
運動不足で怒られたんだって。
「仕事してる上に運動だなんて…だるくてしょうがないんだけどさ…」
「おじいちゃんだから、心配なんじゃない?」
「雅紀も同じ年だわっ」
30分ほど車を走らせると、山の中腹に白亜の建物が見える。
翔にいは、今ここにいる。
あの時、翔にいの家は全焼した。
だから、翔にいの持っていたアヘンも…
あの人のご位牌や写真も全部、焼けた。
ショックを受けた翔にいは、病気が重くなって…
療養している。