第6章 夏の終わり
その光は、揺らめいて見えた。
木々の間から、少し陰ったように見えた。
次の瞬間、ぱあっと明るい強烈な光になった。
「…燃えてるっ…」
その方向は母屋だった。
急いで砂利道を何度も転びながら降りていくと、開けた場所から母屋の屋根から炎が上がってるのが見えた。
何度も何度も転んで、手や足から血が出てる。
でもそんなこと気にしてられなかった。
翔にいが、もしかして中に入ってるかもしれない
「翔にいっ…」
母屋の裏手の崖から飛び降りて、裏庭から前の広場の方に回る。
走りながら母屋の中を確認したけど、人は居なさそうだった。
「あ…」
仏間の少し開いた障子の間に、あの人が見えた。
「嘘…どうしよう…」
母屋の屋根からは既に炎が突き抜けていて。
辺りを明るく浮かび上がらせていた。
あの人を助けなきゃ
でもどうやって…?
あの人は死んでいるのに
「翔っ…だめだっ…」
耳に飛び込んできた叫び声は、相葉先生の声だった。
「いやぁぁっ…潤っ…潤っ…」
翔にいの声だっ…
家の前の広場の方から聞こえた。
慌てて広場のほうへ駆け出した。
「だめだっ…燃えてるんだからっ…」
「だめぇっ…潤がっ…潤が居るからっ…」