第6章 夏の終わり
「ま…待ってっ…」
母屋の横を通りながら、その人の影に走り寄る。
でも、近くなるとその人はまた、どこかに消える。
「待ってぇっ…」
必死に影を追いかけた。
この人しか…
翔にいを助けられない
「待って!お願いっ…」
気がついたら、ケシの畑の焼け跡まで来てた。
「どこ…?」
あの人の姿はかき消えていて…
必死でここまで走ってきたから気づかなかったけど、真っ暗で足元がよく見えない。
急に怖くなった。
あの人も居ない。
翔にいも居ない。
スマホをポケットから取り出して、ライトを着けてなんとか下りの砂利道まで出る。
ここから走れば5分ほどで母屋に戻れる。
そう思った瞬間、目の前が明るく光った。
「え…?」
光ったほうに目を遣るが、何も見えなかった。
気の所為かと思って、走り出そうとした。
「わっ…」
突然、周りの木々の枝が揺れたかと思うと、たくさんの鳥の飛び立つ音。
バサバサと慌てるように、枝を揺らし不気味な音を辺りに響かせた。
その音と同時に、遠くで誰かの叫ぶ声が聞こえた。
何を言っているのかはっきりとは聞き取れなかったが、声のする方を見ると、また明るい光が見えた。