第6章 夏の終わり
「まだ来てないみたいだ…」
「でも、来るならここしかない。待とう…」
「俺、家まで引き返してみる…」
「智…」
「雅紀と和也くんはここから動かないで…行ってくる」
「ああ。わかった…」
大野さんは車を使わず、走って出ていった。
「俺もちょっと外見てくるから…和也くんはこの辺から動かないで」
「わかりました」
相葉先生も翔にいの家の敷地から出ていった。
辺りは真っ暗で…
少し離れたところにある、電信柱についてる街灯の明かりが、少しだけ届いてる。
虫の声が少しだけ聴こえる。
暑かったときはあれほどうるさかったのに…
物陰に隠れながら、ぼうっと家の前の広場を眺めていた。
「あ…」
…花壇に、白い影…
あの人だ
思わず、駆け寄った。
「あのっ…翔にいがっ…」
思わず、頼ってた。
「居なくなってっ…」
なぜだか泣きそうになってて…
必死に助けを求めてた。
あのひとは、落ち着かせるように俺の額に手を当てた。
また、あのひんやりした感覚が額を覆った。
その手が離れていくと、そのまま家の裏手を指差した。
「え…?」
ゆらりと揺らめくと、その人の姿はその指差した先に移動した。