第6章 夏の終わり
その夜。
相葉先生が帰っていくと、いつものように床に敷いてある布団に潜り込んだ。
もう夜は涼しくて。寒いくらいで。
薄手の羽毛布団の中では、翔にいが丸くなって眠っている。
「じゃあ…鍵、締めるから…」
大野さんがいつものように声を掛けてきた。
「あ、はい…」
「おやすみ。和也くん」
「おやすみなさい。大野さん」
パタンとドアが閉じられて、外から鍵の掛かる音がした。
部屋の中は真っ暗になる。
闇に目が慣れないけど、起き上がっていつものように翔にいの隣に潜り込んだ。
布団の中は、暖かい。
「翔にい…」
いつものように、力の入ってない体を抱き寄せた。
ぎゅうっと抱きしめると、暫く翔にいの匂いを感じる。
ずっと風呂に入ることもできないから、濃く翔にいの匂いを感じる。
「…好きだよ…翔にい…」
いつものように…
届かない言葉を、呟く。
「好き…」
届かなくても、いい…
でも、翔にい…覚えていて
翔にいは、ひとりじゃないよ…
俺がいるから
傍に、居るから…
ぎゅっと抱きしめた。
ビクリと翔にいの体が震えた。
「翔にい…?」
「和也…」
やっと闇に慣れた目に、翔にいの顔が写った。