第6章 夏の終わり
大学生の俺に、できることなんてタカが知れてる…
働いてないからお金もないし…
一体この先、翔にいのために、何ができるんだろう…
何をすれば良いんだろう…
「和也くんには、きっちりとおじさんやおばさんたちに話をしてもらうっていう役目があるよ?」
大野さんがにっこりと笑いかけてくれた。
「え…?」
「その前に…翔が回復すれば良いんだけどね…」
「やっぱり…いくらなんでも、俺達は親戚でもなんでもないしさ…この現状を一番正確に把握してる和也くんが、おじさんたちにちゃんと説明して、助けを求めないといけないと思うよ?」
「その時は、俺もちゃんと医師として話をするから…だから、和也くんには、これ以上大事にならないよう、きちんと説明してもらうっていう役割をしてもらいたいんだ」
「お…俺が…」
できるだろうか…
今まで、親戚の大人たちとはろくに接したこともない。
第一、まだまだ子供扱いされてるわけだから、まともに大人な会話なんかしたこともないし…
「できるでしょ…?翔のためなら」
大野さんと相葉先生が俺の顔をまっすぐ見た。
その顔は、真剣だった。
…相葉先生にも、大野さんにも…
多分、俺の気持ちはわかってると思う。
毎晩、翔にいのベッドに入って抱きしめて寝てる。
あの人が…言ったとおりにしないといけないって…
それが一番、翔にいのためになる…そう思ったから。
ベッドで翔にいを抱きしめる姿を何度も見られてるから…わかってるんだと思う。
あの人のことは…アヘンの幻覚だと言われてしまいそうで…
大野さんと相葉先生には言えてなかった。