第6章 夏の終わり
「吸ったんだね…?」
「い…一回だけ…」
相葉先生はため息をつくと、俺を座らせた。
すぐに目とか脈とか、軽く診られて…
「ほ、本当なんです…俺、風邪で酷い熱のときに、多分一回だけで…」
「そう…」
「知らなかったんです…あれがなんなのかも…」
その時、大野さんがリビングに入ってきた。
お盆にカップラーメンを載せている。
「まあ、そうだろうね…じゃなきゃあんなとこに、道具出しておかないよね…」
「雅紀…」
「ああ…智、この子もちょっと疑いあるから…やっぱり翔の部屋に寝かそう」
「いいけど…」
大野さんが俺を見下ろした。
ものすごく気の毒そうな目で…
「ち、違うんです!本当に多分あの一回だけで…」
「…じゃあ、なんでこんな田舎に、大学生の君が一人で残ったの?車もないのに…」
相葉先生が鋭く質問してくることに、答えられない。
「それ…は…」
翔にいと一緒に居たかったからだって…そんな事、言えるわけなかった。
「まあまあ、雅紀…とりあえず、ご飯食べさせてあげようよ…」
大野さんがとりなしてくれて、なんとか解放されたけど…
カップラーメンの味なんかわからなかった。