第6章 夏の終わり
車の中は沈黙だった。
翔にいの寝息だけが聞こえている。
暫く走っていると、広い畑の中の道に出た。
花の咲いているビニールハウスがいくつも建っている。
やがて畑の中に家が見えてきた。
そこには『大野ガーデン』と書いた看板が出ていた。
ここ、大野さんの畑なんだ…
だから…相葉先生、あの花壇を見てもらったんだ。
家や倉庫みたいなとこを通り過ぎて、更に奥に行くとこじんまりとした新しい家が見えてきた。
「智、ごめんね…」
相葉先生が苦しそうに声を出した。
「いいんだよ…俺に話してくれてよかったよ…」
「なるべく迷惑かけないようにするから…」
「何言ってるんだよ。そんなこと、気にしないで…」
家の玄関の前に車をつけると、大野さんと一緒に翔にいを中に運び入れた。
小さい家は、なんだか油の匂いがする。
ここで、大野さんは一人暮らしをして、花農家をしながら油絵を描いているってことだった。
最初に見えた家は母屋で、そこには大野さんの家族が住んでいるということだった。
奥の部屋は寝室になっていて、そこのベッドに翔にいを寝かせた。
「和也くんは、俺と一緒にこっちの部屋ね」
その隣の、なんにもない部屋に荷物を置いた。
「布団で我慢してね」
そう言うと、人の良さそうな眉を少し下げた。