第6章 夏の終わり
「相葉先生っ…」
「この前来た時、血液検査もしたんだ…おかしいと思ったから…」
どんどん廊下を歩いて、玄関に着いた。
「アヘンの成分が出たんだ…それに、あの花壇にある植物。あれ、芥子の花だ」
「え…ケシ…?」
「日本では栽培が禁止されてる種類だよ。アヘンの原料になる種類の芥子」
翔にいを抱えたまま外に出た。
大野さんが花壇から立ち上がって、車の後ろのドアを開いた。
「今から、彼の家に行くから」
「え…?」
「相葉医院だと、母さんにバレるから…智は一人暮らしだから、協力してもらうから」
「え、あの…」
「和也くんも荷物まとめて。一緒に行くから」
車の後部座席に翔にいを寝かせると、大野さんが一緒に乗り込んでいった。
「早く!準備して!」
相葉先生に言われて、慌てて荷物を取りに家に戻った。
翔にいの荷物は、相葉先生がまとめてくれた。
家の戸締まりをして、車のトランクに荷物を詰め込んだ。
呆然としていると、助手席に押し込まれた。
「じゃあ、行くから…智、頼んだよ」
「ああ…」
後ろの座席で、大野さんは翔にいの体を抱えてる。
車がターンして、家の敷地を出る時…
あの人が、花壇に立っているのが見えた
悲しそうな顔をしながらこちらを見ている
白い頬を、涙が零れ落ちた気がした