第6章 夏の終わり
部屋の中に漂う甘い匂いが思考を散り散りにする。
「教えて…?」
もう一度、その人の口が動いた。
声は聞こえない。
でも今度はさっきよりも大きく唇が動いた。
”助けて”
「助ける…?誰を…」
その人の目が、俺から逸らされて…廊下の先を見た。
「…翔にいを…助けるの…?」
そう呟くと、その人はこちらをみて、微かに頷いた。
シャツを握りしめていた手を解くと、こちらに向かって手を伸ばしてきた。
”助けて”
”助けて”
何度もそう口が動いた。
気がついたら、翔にいの部屋の中は明るくなっていて。
今が朝だということに気づいた。
「あれ…」
俺は翔にいの布団に座っていた。
廊下を見ると、もう誰も居ない。
「翔にい…!」
あの人の顔と言葉…
何をどう助けたら良いのかなんてわからない。
でも、俺に助けを求めるほど…
翔にいに何か起こってる。
あの異常な痩せ方…
やっぱり、おかしいんだ
慌てて仏間まで行くと、やせ細った翔にいがやっぱり裸で眠ってて。
「翔にいっ…起きてっ…」
抱き起こしたら、酷く軽くて。
「翔にいっ…」
翔にいは目を覚まさなかった。