第6章 夏の終わり
あれはなに
夢中で部屋を飛び出した。
座敷に入ってタオルケットに包まってみたけど、ガタガタ震えが止まらない。
確かにあれは、昼間見たあの人で。
なのに、あの人は朝の青白い光の中に消えた。
頭が痛む。
ガンガンする。
一体なんなんだ。
ガタガタ震えてたら、座敷の襖を開ける音がした。
「ひっ…」
思わずタオルケットから顔を出して見ると、翔にいが立っていた。
白いシーツを床に引きずりながら身に纏って、笑ってる。
「翔にいっ…」
甘い匂いが漂ってきたかと思うと、翔にいがゆっくりと俺に近づいてくる。
怖い
翔にいじゃないみたい
タオルケットを頭から被った。
頭が痛くて、逃げ出せない。
裸足で縁側から飛び出したいくらい怖いのに、動けなかった。
「…こないで…来ないでぇっ…」
畳に布が擦れる音が、どんどん近くなってくる。
「…かぁずなり…」
くすくす笑いながら、俺のこと呼ぶ声は確かに翔にいなのに。
怖い
「…抱いて…?ねえ…」
ものすごい力で、タオルケットを引っ張られた。
「やだあっ…来るなっ…」
必死で引っ張ったけど、全然敵わない。
「和也…」
甘い吐息が耳元に掛かる。
「抱いて…」