第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
アパートに帰ると、智は俺の部屋に来た。
毎日、どっちの部屋に帰るかは、決まって居なくて。
どちらも生活できるように、ちゃんとお互いの親がいろいろしてくれてたから、使わないでいるのも悪いし…
だからお互いの部屋を行ったり来たりしてた。
「お風呂、入るでしょ?」
「うん…」
古くて狭いけど、このアパートは風呂とトイレが別で助かってる。
お湯を落として戻ってくると、智はカーペットの床に寝転がってた。
「智…寝ちゃだめだよ?」
「んー…」
1Kの狭いアパート。
居間にしている部屋は、ベッドを一つ置くといっぱいで。
そんな狭い床の上で、智は丸まってる。
小さくなってる背中をそっと撫でた。
「…大丈夫だよ…智…」
「うん…」
「もしも嫌われてたとしても…俺たちがきちんと生きていけば…そのうち翔ちゃんだってわかってくれるよ…」
「ああ…」
「時間を、掛けよう…?」
苦い思いが、胸の中に広がる。
もしも嫌われていたら…
そんなはずはないと思う。
翔ちゃんと俺たちの関係は、そんなものじゃなかったと思う。
だけど…現実は…
これだけ避けられていたら、自信もなくなってくる。
親や兄弟は認めてくれたけど…
潤や雅紀もなんとなく受け入れてくれてるけど…
俺たちは、男同士で
翔ちゃんも…男
普通じゃ…ないことくらい、わかってる。