第6章 夏の終わり
診察の後、隣の処置室みたいなとこのベッドに寝かされて、点滴を受けた。
「夏風邪だねえ…急に涼しくなっちゃったし。都会っ子にはちょっとここの気候はキツイかな?」
この辺は標高が高いから、夏場の夜は冷房が要らないくらい涼しくなる。
今年はちょっと異常に暑かったから、さすがにエアコン入れないといけなかったけども。
「すまない。無理言って…」
翔にいが、先生に謝ってる。
「いいよ。結構しんどそうだったし、早めに診られてよかった」
「ありがとうな。雅紀」
相葉先生と翔にいは同級生で幼馴染なんだって。
どうりで仲が良さそうだと思った。
ウトウトしながらふたりの会話を聞いてた。
「いいって。それより、翔ちゃん…」
「ん?」
「痩せすぎだよ?ちゃんと食べてるの?」
「食べてるよ」
「嘘…ちょっとおかしいよ?」
「食べてるって…」
「翔ちゃん!!」
相葉先生の強い声が聞こえて、思わず目を開けた。
翔にいの腕を、先生が掴んでる。
「こんな細くなって…なにか、あったね?」
「ないって…離せよ」
「翔ちゃん!」
相葉先生が翔にいの腕を強く引いた瞬間、処置室のドアが開いた。
「あら、なにでっかい声出してるの?」
看護師のおばさんが中に入ってきた。
午後の診察が始まるとのことで、しぶしぶ相葉先生は外に出ていった。