第6章 夏の終わり
病院に着くと、まだ午後の診察前だった。
小さな個人医院で「相葉医院」と看板に書いてある。
どうやら俺は小さい頃ここにかかったことがあるようだった。
あのときは、確かかあちゃんに連れられてきたんだっけ。
「あ、まだか…」
車を前向きで停めると、翔にいは少し考え込んでた。
見覚えのある外観を助手席から眺めてると、翔にいは「休診中」の札がかかってるのにズカズカと中に入っていった。
しばらくすると、白衣を着た人を連れて出てきた。
「和也…診てもらえるっていうから、行こう」
翔にいは助手席のドアを開けると、俺を抱き上げた。
「ごめん。雅紀、ドア閉めて」
「はいよ」
バタンと車のドアが閉じられて、俺は病院の中に運び入れられた。
診察室のベッドに横になって待っていると、白衣の人が入ってきた。
「ええっと…二宮和也くんね…」
「すまんな。急かしてしまって」
「いいよ。ちょうど待合室開けようと思ってたし」
キイキイ音がする社長みたいな椅子に座ると、くるりとこちらを向いた。
「ちょっと熱測るからね」
体温計を脇に入れられた。
ピピッと音がするとすぐに取っていった。
「38度ねえ…ちょっと高いね」
そのあと、喉を見られたり胸の音を聞かれたり。
結局、風邪でしょうってことで、点滴してもらうことになった。