第6章 夏の終わり
トレーの上には、おかゆのはいった丼。
それと水の入ったコップと市販の風邪薬。
おかゆを食べて、薬は苦手だけど風邪薬もなんとか飲んで。
「翔にい…」
キスしてくれた額を押さえながら、なんだかしあわせで。
俺…翔にいのこと、好きになったのかな…
あんなことしてるから、男なのに…従兄弟なのに…
好きになってしまったのかな…
田舎だから窓を開けておくだけで、結構涼しくて。
ちょっと熱で身体が痛かったけど、座敷の布団の中は快適だった。
日差しが眩しい。
涼しくなったとはいえ、まだ8月だ。
夏の日差しは、明るくて。
虫の鳴く声
セミの鳴く声
鳥のさえずり
それ以外、何も聞こえない。
薬が効いてきたのか、ウトウトしてきた。
でも…
嬉しくて…
なんだか眠りたくなかった。
「翔にい…」
白い肌と、甘い匂いを思い出して胸が高鳴る。
熱が引いたら、またあの身体を抱ける…
「翔…にぃ…」
もっと…傍に…
俺の傍に、居てよ…
喉が痛い
身体が熱くて、目が覚めた
喉の奥がチクチク痛む。
トレーの上に載ってるコップには水がもうなかったから、台所に行くしかない。
フラフラするけど、トレーを持って立ち上がった。