第6章 夏の終わり
俺の布団の横に座ると、トレーを横に置いた。
「昼も帰ってくるから…夕方、病院行こうな」
「え…大丈夫だよ…」
「だめ。病院行かないと、治らないだろ?今日は午前はどうしても外せないから、おとなしく寝てろ」
「いいのに…」
そういうと、にっこり笑って俺の頭をポンポンと撫でた。
「いい子にしてろよ」
「ガキじゃねえんだけど…」
そう言って剥れると、ますます笑われた。
「じゃあもう行くから…」
そう言って立ち上がろうとした翔にいの腕を思わず掴んだ。
「和也?」
「あ…」
やっぱり…
なんだか、寂しいのかな…
どこにも行って欲しくなくて…
最初びっくりした顔をしてたけど、翔にいはまた笑ってくれて…
「寝てろ…寝てたらあっという間だから…な…?」
そう言って、俺の額にキスしてくれた。
「え…?」
「じゃあ、行ってくる」
額を押さえたまま、呆然としてる間に翔にいは座敷を出ていった。
玄関を開け締めする音が聞こえて、車のエンジンの音が遠ざかると、セミの鳴く声だけが聞こえた。
「うそ…」
翔にいから…そういうことしてくれるなんて…
「うそ…うそ…」
嬉しすぎて、なんか出そうだった。